チャットボットの導入はBtoC事業、特にQ&A*登録数が数百件程度と少ないケースにおいて有効だという意見がある。しかしBtoB事業、しかもQ&A登録数が1,000件以上というケースでも、チャットボット、有人チャットの導入により成果を上げている企業が存在する。

株式会社オロは、株式会社ZeQが提供するJ-ウィジェットの機能の一つであるGuideBOT(ガイドボット)を利用している。コロナ禍でも問い合わせ数の増加、業務効率の向上、お客様満足度の向上、リモートワークを実現している株式会社オロの同社の麻谷充弘氏にお話を伺った。

*Q&A…Question「質問」とAnswer「回答」のセットのこと

FAQのデータをチャットボットに活用したい

BtoB事業・1,000件以上のQ&Aでも効果を発揮!オロのJ-ウィジェット(ジェーウィジェット)活用事例に迫る

(出典:株式会社オロ

株式会社オロは創業1999年の東証一部上場企業だ。今から15年前の2006年からクラウドERPを提供してきた。コロナ禍によりクラウドに対する需要が高まり、昨今の厳しい世相でも増収増益となっている。

オロには2つの事業部があり、クラウドERP「ZAC(ザック)」とクラウドPSA「Reforma PSA(レフォルマピーエスエー)」の開発・販売を担当しているのがクラウドソリューション事業部だ。

麻谷氏はクラウドソリューション事業部で自動化とデータ分析を担当しているチームのリーダーとして、J-ウィジェットの選定から実際の運用までを担当してきた。

麻谷氏:「ZACとReforma PSAは共通して案件別・プロジェクト別の損益管理を中心とした幅広い機能を備えています。

ZACは見積書や請求書などの作成、売上の計上、入金管理などの販売機能、発注書などの作成、仕入の計上、支払管理などの購買機能、その他勤怠管理や経費管理などの機能を持つフル機能のERPパッケージです。メインターゲット層は従業員規模50~300名の企業です。

一方、Reforma PSAは従業員50名までのスタートアップベンチャー企業を対象としており、ZACに比べて機能を絞ってシンプルにし、価格も抑えているという特徴があります。」

 

オロではまずスモールスタートということで、Reforma PSAのユーザーからの問い合わせ対応にJ-ウィジェットの利用を開始した。まずはチャットボットで自動回答し、それで解決できない場合は有人チャットにつないで保守チームが対応し、エンドユーザーからの問い合わせを解決させる流れだ。

そんなオロだが、J-ウィジェットを導入する以前は別のチャットボットを利用していた。

 

麻谷氏:「以前使っていたチャットボットも良い製品でしたが、2つの問題に直面し、別の製品への乗り換えを検討することになりました。

まず1点目として、自動回答に用いられる回答データの登録についてです。多くのチャットボットでいえることですが、質問と回答のデータをすべて一からチャットボットに登録しなければなりません中にはExcelシートにQ&Aをまとめて一括取り込みできるものもありますが、とにかくすべてのデータをチャットボット登録用に一から成型しなければなりません。

Reforma PSAでチャットボット導入する際、最初に150件ほどのQ&Aを登録してから始めましたが、すぐに1,000件ほど登録しないと効果が出ないのではないかという仮説が立てられる状況でした。Reforma PSAよりもZACの方がはるかに機能が豊富で、もしReforma PSAで1,000件の登録が必要なら、ZACではどれほどのQ&Aの登録が必要なのか。

仮に1,000件登録できたとしても、その後もバージョンアップで機能がどんどん変わっていくので、1,000件のQ&Aもアップデートしなければなりません。チャットボットのためだけに1,000件のデータをメンテナンスするのは非効率ですチャットボットだけでなく、FAQサイトを作るような機能があって、そのFAQのデータをチャットボットに使い回せるようなものはないかと他のチャットボットを探すことにしました。


過去のやり取りを見直しながら、有人対応も行いたい

2点目は有人チャットへの繋ぎ込みです。ERPパッケージは企業の基幹システムですので、問い合わせには複雑な質問が多く、1つエラーが生じたとしてもどのような状況下でどこのデータにエラーが生じたのかという詳細な質疑応答を繰り返す必要があります。そこで、実際に質問をいただいてから最後のやり取りまでの平均時間が2、3時間かかってしまっていました。

J-ウィジェットの前に利用していたツールでは、数十分でセッションが切れてしまい、その短い時間内で質問を解決させなければ、お客様側で過去のやり取りが見えなくなってしまうのです。よって、セッションが切れないもの、過去のやり取りを見直すことができるものが必要でした。」

 

▼J-ウィジェットのウィンドウ

BtoB事業・1,000件以上のQ&Aでも効果を発揮!オロのJ-ウィジェット(ジェーウィジェット)活用事例に迫る

 

既存データを活用できたので、移行の手間も少ない

これら2つの課題を解決できるのがJ-ウィジェットだ。オロではJ-ウィジェットに切り替えることにしたが、既存ツールから新しいツールに乗り換える際に生じやすい問題が、データ移行時のトラブルだ。切り替えに多大な工数がかかってしまうケースがあるが、オロではどうだったのだろうか。

麻谷氏J-ウィジェットで表示させる回答は、Zendeskで作成したヘルプセンター内の記事データと連動させることができるため、わざわざチャットボット登録用のQ&Aを作成する必要がありませんでした。ヘルプセンターの記事は、ブログ感覚で作成できるようになっていますので、HTMLのタグのような記載も不要で簡単です。前のツールで使用していたデータをダウンロードして、少々形を整えるだけで記事を作成できました。J-ウィジェットならQ&Aのデータが何らかの形で社内にあれば、それほど手間はかかりません。

中にはベンダーがデータを一括で取り込んでくれるサービスもありますが、依頼してから反映されるまでにタイムラグがあるのが問題でした。J-ウィジェットの仕組みの方が、はるかにメンテナンス性に優れており、運用の手間がかかりません。」

1つ1つのQ&Aにタグを設定し、検索時に利用する仕組みのチャットボットも存在するが、そのタグ設定やメンテナンスに時間がかかってしまうのがデメリットだ。一方、J-ウィジェットではGoogleの検索エンジンの仕組みを利用しており、タグの設定は不要だ。その点も移行作業をスムーズにした。

麻谷氏:「J-ウィジェットは他のチャットボットと比べて確実に初期構築にかかる時間やメンテナンス工数をかなり圧縮できるようなサービスだと思います。」

チャット経由の問い合わせ数が劇的に増加。
有人対応は50%以上削減も、満足度は同程度に

チャットボットの導入前後、J-ウィジェットへの切替前後にどのような変化が起こったのか。

麻谷氏:「そもそもチャットボットを導入する以前は、Reforma PSAのユーザー様からいただく問い合わせはメールや電話で月100件、1クォーターで300件程度でした。

チャットボットを導入した当初は、メールや電話からの問い合わせ数に変化はなく、チャットボットからの問い合わせがプラスして増えました。1クォーターで200~400件程度で、これらに関してはチャットボットが自動で回答してくれるため、問い合わせ数の増加に伴い、従業員の負担が増加するということはありませんが、電話やメールでの問い合わせは減っていませんから、以前と業務量に変化はありません。次のステップではチャットボットを活用して、電話・メールでの問合せも減らしたかったのですが、J-ウィジェットの前に使っていたチャットボットでは対応が難しそうでした。」

 

もっとも望ましいのはReforma PSAに関してわからないことがない、操作でつまずくこともないという状態だ。次に、つまずいてしまったときに仕方なくメールや電話で手間をかけて問い合わせるのではなく、チャットボットで気軽に質問できるという状態が顧客にとって望ましい状況だろう。

 

BtoB事業・1,000件以上のQ&Aでも効果を発揮!オロのJ-ウィジェット(ジェーウィジェット)活用事例に迫る

麻谷氏:「そこでJ-ウィジェットに切り替えました。結果、電話やメールによる人への問い合わせが減少しました。その上、私があまり想定していなかったことですが、チャットボットへの問い合わせ数がさらに劇的に増えるという結果になったのです。倍以上の伸びです。

2019年度と2020年度の比較で、人が対応しなければならない問い合わせ数は50%以上削減でき、工数は20%以上削減できました。」

J-ウィジェットに切り替えたことで、明らかにデータとして効果が出ている。チャットボットで対応できる問い合わせは簡単なものであり、難しい内容は人が対応しなければならない。そのため問い合わせ50%削減に対して、工数も50%削減とはいかないが、それでも20%以上削減することができたのだ。

麻谷氏:「NPSのアンケートを実施しましたが、ヘルプセンターとあわせてJ-ウィジェットに関してもアンケート項目を入れてみたところ、「有人チャットと同じぐらい高評価」というアンケート結果が得られました

やはりメールを書いたり、電話をかけたりして問い合わせるのは、お客様にとっても手間でわずらわしいのでしょう。それをJ-ウィジェットで自己解決できるようにしたことで、お客様に満足いただけているのではないかと思います。

ヘルプセンター活用で、チームの応対力も均一化

顧客から高く評価されているJ-ウィジェットだが、顧客からの問い合わせに対応する社内メンバーの反応はどうだったのか。

 

麻谷氏:「実はJ-ウィジェットに乗り換えるタイミングで保守側の運用も変えています。

チャットボットで解決できなかった質問が保守チーム宛に届きます。その際、その質問に対する回答が、ヘルプセンターの記事になかったのかについて調査する業務フローを設けました。そこでデータを見るとおもしろいことに、平均すると3分の1ほどの問い合わせに対して該当する記事が存在していたのです。つまり、お客様がそれをチャットボットで見つけることができなかったということです。質問する文章のキーワード次第では知りたいことがヒットしなかったわけです。

記事がある問い合わせの場合、お客様への回答としてその記事をご案内するようにしました。メールであれば「こちらの記事をご覧ください」といった文章で返します。」

結果、次回以降から先ずはヘルプセンターを確認するユーザーや、質問のキーワードを替えてみるユーザーが増え、自己解決率を上げようとする動きが見られた。記事を回答として提示したことが「ヘルプセンターに答えがある」とユーザーが認識するきっかけになったからだ。

 

BtoB事業・1,000件以上のQ&Aでも効果を発揮!オロのJ-ウィジェット(ジェーウィジェット)活用事例に迫る

麻谷氏:「弊社の保守チームの声としましては、やはりヘルプセンターの記事という形で社内ナレッジとしてどんどん蓄積されていきますので、入ってきたばかりの入社歴の浅い新人でもある程度、問い合わせ対応ができるようになりました。

また、ヘルプセンターでFAQ以外に操作マニュアルも登録しているので、社内外でのナレッジ共有と標準化が同時に実現できています。ヘルプセンターに記事さえあれば、ベテランであっても新人であっても、誰が回答してもある程度のレベルが返せます。

保守チームにおいて今の仕組みは好評で、一番喜んでいるのはやはり問い合わせの件数が減ったことです。直近では月に20件ほど、1日1件あるかないかという程度です。」


顧客からも社内からも高く評価されているJ-ウィジェット。オロでは今後ZACでの利用も検討している。

麻谷氏:「最初からReforma PSAの方で結果が出たら、ZACにスケールしていく作戦でいたので、実は今ちょうど記念すべき1社目で、ベータ版としてZACユーザーにJ-ウィジェットを導入しています。ベータ版の導入社数を増やして運用上の問題がなければ、正式版として4月以降にすべてのお客様に対して広げていく予定です。

また、ZACで利用を開始するにあたり、タイミングよくJ-ウィジェットに新たにシナリオ型チャットボット機能が搭載されたので、そちらも活用していきたいと考えています。」

パッケージでもカスタマイズ可能なのがJ-ウィジェットの魅力

 

質問の文章を元にQ&Aを参照する一問一答型チャットボット機能がJ-ウィジェットの標準機能だったが、2021年2月に新たにシナリオ型チャットボット機能が実装された。チャットボットの画面に表示される選択肢を選ぶことで最終的に回答が表示される機能だ。J-ウィジェットはパッケージとして展開しているため、今回のような新機能も追加費用なく使用することができる。

 

麻谷氏:「もう一点大きいところでいうと、外部システム連携機能に取り組んでいただけたら非常にありがたいです。

例えば、チャットボットとRPA製品の連携です。チャットボットから「パスワードを忘れたのでロックを解除してほしい」という問い合わせが届いた際、RPAでつないでパスワードロックを解除して「解除しました」とメッセージを送信するようなものとか、チャットボットのウィンドウからどんどん選択肢を選ぶと自動で経費申請できるとか。自動化を扱っている私たちのチームとしてはシステム連携はどんどんやっていきたいですね。」

外部システムとの連携にはカスタマイズが必要なチャットボットが多い。しかしそもそもパッケージ売りしているチャットボットではカスタマイズに対応していなかったり、対応できても月額費用が最低10~15万円程度かかってしまう。

麻谷氏:「J-ウィジェットはZendeskのライセンス料として月額5万円ほどかかりますが、パッケージなのにカスタマイズにも対応していただける点がすばらしいと思います。いつも柔軟に対応いただき本当に感謝しております。」

新しい取り組みに積極的な企業や業界的にスピード感が求められる企業では、導入ツールを選定する上でシステムの柔軟性は欠かせない視点だ。

リモートワークとも相性の良いJ-ウィジェット

BtoB事業・1,000件以上のQ&Aでも効果を発揮!オロのJ-ウィジェット(ジェーウィジェット)活用事例に迫る

オロでは以前からリモートワークや時差通勤に取り組んできた。15年ほど前からクラウドERPを提供する企業であったこともあるが、2017年の東証マザーズ上場、2018年の東証一部への市場変更が後押しとなった。それがコロナ禍でさらに加速している。

コロナ禍では政府の掲げる出勤率7割削減をクリアできるよう、出社を週1日とし、残りはリモートワークを推奨していた。全社員が週1日出社すれば、8割の削減が可能だ。

 

麻谷氏:「チャットからの問い合わせに対応する実働部隊は宮崎県と新潟県の拠点に勤めていますが、電話ではなくチャットであればパソコンで対応できるので、リモートワークで対応していました。

J-ウィジェットをまだ本導入していないZACでは、昨年、問い合わせの総数が減ってしまい、一方、J-ウィジェットを利用しているReforma PSAでは有人チャットとチャットボットを合わせるとむしろ総数が増えています。やはりお客様もリモートワークされていて、家では電話で問い合わせがしづらいのだと思います。はやくZACでもJ-ウィジェットを本導入したいですね。」

 

効率面だけでなく、時代に合わせた働き方を実現させるためにも、チャットボットが有効なツールだと実感すると同時に、麻谷氏は電話以外でしっかりコミュニケーションをとることのできるチャネルを用意しなければいけないと痛感したと語る。

チャットボットは簡単な質問しか解決できないため、難しい質問に対応できるチャネルも必要だ。しかし今回のコロナ禍では電話はリモートワークでは使いづらく、その他の選択肢が求められる。例えば有人チャットがその代替手段となり得るだろう。

ユーザー変化に合わせたオムニチャネルの必要性

麻谷氏:「J-ウィジェットを使い始めてわかったことですが、実はお客様の方がうまくチャネルを使い分けているケースも多く、複雑な質問は最初から有人チャット、さらに込み入った内容であれば電話で問い合わせてくるお客様もいらっしゃいます。オムニチャネルのあるべき姿でしょう。」

BtoCのECサイトや物件探しのWebサイトでは、チャットを活用しているケースが多く、普段の生活を通して、複数チャネルがある状態に慣れている人が増えてきている。以前はチャットボットはBtoC向け、Q&Aの数が少ないケースで効果を発揮するという意見もあったが、ユーザーが変化しつつある今、BtoB企業も電話、メール、チャットボットなどの複数のチャネルを持つことでユーザーの変化に合わせていく必要があるだろう。Q&Aの総数もオロの事例のように1,000件以上あってもJ-ウィジェットなら対応可能だ。

 

麻谷氏:「Reforma PSAで電話窓口を閉じてチャットボット・有人チャットに切り替えていく中で、ZACも最終的に同じようにすればいいと考えていましたが、それは間違いだったと今は思っています。やはりオムニチャネルですね。

電話もチャットボットも用意して、お客様がいいと思うもの、適切だと思うものを使い分けられることが、カスタマーエクスペリエンス(CX)の向上、お客様満足度の向上につながっていくのだと実感しています。

最初は事業部としての生産性の向上を目的としてチャットボットを導入しました。顧客満足度の向上でもなんでもなく、保守チームの工数削減から始まったのです。

しかし導入後2、3ヶ月で「そうじゃないんじゃないか」と思い始めました。オロの都合ではなくて、お客様にとってというのがなけれがこの取り組みは成功しないだろうと。

結果、お客様は都合の良い問い合わせ方法を選び、工数の削減で従業員も喜び、会社としても原価削減できているので費用対効果が上がり、お客様も従業員も会社もみんなハッピーという理想の状態です。」

 

オロの事例が示すように、今後、企業はBtoC、BtoBに関わらず、ユーザーに合わせて様々なチャネルを用意していく必要性に迫られるだろう。しかし闇雲にチャネルを増やすのではなく、運用面、生産性といった点も考慮して最適な手段を選ばなければならない。

J-ウィジェットは顧客、現場、経営層の三者にとってメリットのあるチャットツールだ。ぜひこの機会に詳細を確認してみて欲しい。

J-ウィジェット

Zendeskの標準機能のWeb Widget/Answer Botを活用して、よりご利用シーンに応じて活用しやすいようにZeQが開発を行ったウィジェット製品をご用意しています。

お客様のご要望に合わせて、さらにカスタマイズを行うため、貴社のやりたいことがしっかり実現できます。

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